Seminar Report

「雪の日」を考える

~気候変動とスキー場で働く私たちができること~

雪に親しみ、雪に感謝し、雪を通して地球環境を考えよう。
そんな思いから2017年に制定された2月第4日曜日の「雪の日」。
この日を制定した「スノーリゾート信州」プロモーション委員会(事務局 (一社)長野県観光機構)は、2021年9月29日に「雪の日」の理念を共有し気候変動への学びを深めるためのセミナーを開催しました。
熱心に耳を傾けたのは、県内のスキー場関係者です。

温暖化による雪の減少

環境問題と雪について講演を行ったのは、大町市に本部を構えるProtect Our Winters Japan(https://protectourwinters.jp/)の代表理事でプロスノーボーダーでもある小松吾郎さんです。

Protect Our Winters(通称POW)は、降雪量の減少に危機感を抱いたスノーボーダーたちがアメリカで立ち上げた組織です。気候変動問題に取り組みながら世界中にネットワークを広げ、ゼロカーボン実現に向けた実践や啓蒙活動などを行っています。

「実は日本は世界一の豪雪国で、雪質も良い。雪や雪文化は日本人の生活に重要な役割を果たしている」と小松さん。
その良質な雪が減少している原因は温暖化にあり、温暖化の原因が温室効果ガスにあることは周知のとおりです。
温暖化が進むと、異常気温、海面上昇、豪雨災害、生態系破壊、永久凍土融解といった自然破壊・災害が進むばかりでなく、大気汚染や伝染病などの健康被害、食糧問題、難民問題などが深刻化し、戦争につながる危険性もあると小松さんは指摘します。

  • 出典)温室効果ガスインベントリオフィス
    全国地球温暖化防止活動推進センター(http://www.jccca.org/

選び、学び、行動する

では、どうすればゼロカーボンは達成できるのでしょうか。
新しい技術や省エネを取り入れる。建物の断熱性を高める。無駄をなくす。移動や輸送の手段を変える。食文化を見直す。再生可能エネルギーへシフトする。
こうした取り組みのヒントを提示して、さらに小松さんは続けます。
「気候変動は地球上のすべての人に関係するが、特にスキー場関係者の私たちに直結した問題。これからどんな未来を選ぶか、正しい選択で世の中は変えられる。まずは学び、その学びを共有し、広めること。私たちが先頭を切って伝えていくことに意義がある。なにより、行動を起こすことが大切です。」

  • <POW Japan は、家庭や事業所の電力の再生可能エネルギーへの切り替えも呼びかけている。>

  • <現在、POWの活動は世界13か国に広がっている。>

欧米スキー場の先進事例

気候変動問題に対して、スキー場はどう向き合い、どう取り組むか。
国内外の事例を紹介したのはPOW japan事務局長の高田翔太郎さんです。

アメリカで300以上のスノーリゾートが加盟する全米スキー場協会は、「スキー場にとって環境は一番の資産であり、気候変動は最も差し迫った脅威。だからこそ自分たちは行動を起こしている」というメッセージを掲げ、持続可能なスキー場をめざすために必要な情報の提供や、優れた環境対策を実践するスキー場の表彰などを行っているそうです。
雑誌『Outside』は「最も環境にやさしいアメリカ10のスノーリゾート」を企画し、選ばれたスキー場では、再生可能エネルギーへの切り替え、太陽光・水力発電への投資、環境基金、バイオマスによる暖房システム、脱プラスチックといった取り組みが実施されています。このようなテーマの企画は旅行会社やメディアのサイトでも多く目にすることできます。

ヨーロッパでも、消費する以上の電力を生み出す屋内スキー場(ノルウェー)、プラスチック製品全面禁止(イタリア)、ガソリン車乗り入れ禁止(スイス)など、環境に配慮したスノーリゾートに注目が集まっているそうです。

  • <セミナー資料より>

もちろん日本でも

国内の事例として、白馬エリアスキー場の再生可能エネルギーへの切り替えや、LED照明への切り替え、ペットボトルや自販機の撤去、食材の地産地消などの施策が紹介されました。

大町市、白馬村、小谷村が「HAKUBAVALLEY TOURISM」を組織し、白馬バレーをエコツーリズムの聖地にしようという動きもスタートしています。その動きの中で、エリア内10のスキー場すべてが再生可能エネルギーへの切り替えを進めるという2025年目標が掲げられています。その背景には、POWで集めた「気候変動対策に取り組むスノーリゾートを応援する」1万5000もの署名の後押しがあったそうです。
「スキー場が雪を守るための環境的な取り組みをすることは、利用客に選ばれる基準の一つになりつつある。その流れが長野県のスキー場で加速するよう、私たちもお手伝いを続けていきたい」というメッセージで高田さんは発表を締めくくりました。

できることから一歩ずつ

最後に、参加者を交えた意見交換会が実施されました。
「海外の高級リゾートと同じようにはいかないが、自分たちでもやれそうなことはあった」
「選ばれるためには、環境への取り組みをアピールすることも重要だとわかった」
「子ども用の環境教育プログラムができれば、スキー修学旅行などの集客力も上がるのでは」
など、当事者だからこその真摯な感想や意見が出ました。

少しずつでもいい、できることからやってみよう。
スノーリゾートの未来を思い描きながら、前向きな思いを抱いた参加者が多かったようです。
長野県のスノーリゾート業界の取り組みに、これからもご注目ください。

SDGs先進県の戦略

長野県は、2019年に都道府県としては初の気候非常事態を宣言したSDGs先進県です。
セミナーでは、長野県環境部環境政策課・ゼロカーボン推進室が長野県ゼロカーボン戦略について発表しました。
めざすのは「今まで以上に快適で利便性の高い社会」であり、「環境と地域に根ざした持続可能なライフスタイルの定着と地域経済の循環・発展」であり、「県民の暮らしの質の向上」です。
わかりやすい情報が満載の以下のサイトもご覧ください。
〈信州気候変動適応センター〉https://lccac-shinshu.org/
〈信州環境カレッジ〉https://shinshu-ecollege.pref.nagano.lg.jp/
〈信州ゼロカーボンBOOK〉https://www.pref.nagano.lg.jp/kankyo/keikaku/zerocarbon/documents/02book_kenmin.pdf